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ハンガリーの伝統工芸品のカロチャ刺繍作成中の職人さんの手元の写真

カロチャの女性たちが守り続ける
伝統を紡ぐ手仕事

1枚のカロチャ刺繍が、わたしたちの手元に届くまでThe progress of work

あなたは、カロチャ刺繍がどうやってつくられているのか知っていますか?

ハンガリーへ行けば、土産物屋や市場でたくさん見かけるカロチャ刺繍ですが、「全て手作り・ハンドメイドである」ということ以外は、案外知らないものです。

現地の職人に聞いたカロチャ刺繍のつくりかた

コツカマチカは、今回特別に、制作工程を見学させてもらいました。
カロチャの職人のつくる美しいカロチャの刺繍。その作り方を特別にご紹介します!

行程その① 下絵をつける

カロチャの職人マリアン氏がデザインを写している様子

カロチャ刺繍は、まず、白い綿の布に下絵をつけるところからはじまります。

下絵は、モチーフの描かれたステンシルシートを使います。
刺繍のベースとなる白い生地の上に、刺繍のモチーフどおりに穴が開けられたステンシルシートを敷き、洗い落とせる青い塗料を上から丁寧に塗りつけていきます。すると、布には美しいモチーフが写し出されていきます。

マリアン氏の作業場には、目につくだけで何十枚もの下絵用のステンシルシートがありました。これもコツコツ作りためられてきた、彼女の財産です。

行程その② ひたすら刺繍!

カロチャの職人マリアン氏が実際に刺繍をしている様子

下絵が終わると、次は刺繍に入ります。
ひと針ひと針、丁寧に刺繍が施されていきます。

小さなコースターくらいのものであれば、1時間もかからないそうですが、テーブルクロスや、サイズが1メートルを超す主に鑑賞用として使用されるような大作は、刺繍作業だけで一か月以上かかることもあるようです。

考えるだけで気が遠くなる話ですが、彼女は「テレビを見ながら、音楽を聴きながら、家事の合間や寝る前だって、いつでも刺繍はできるものよ」と言っていました。

このように生活に密着した文化が、カロチャ刺繍なのです。

ちょっとだけ豆知識 刺繍糸について
カロチャ刺繍に使われる様々な色の刺繍糸
「チューリップの赤色」「嫉妬の黄色」など糸の色には伝統的な呼び方があります。

刺繍糸にも、伝統の色柄のものには決まったカラーや材質の糸があります。
基本は、赤、青、緑、黄色、紫、ピンク、それにそれぞれの“陰の色”となる暗いカラー。
ただ最近は、伝統のものではないけれども要望の多い色柄のものも、多数つくられています。

行程その③ レース部分をつくる

カロチャの職人マリアン氏がミシンでレースを編んでいる様子

刺繍が終われば次は、カロチャの刺繍で特徴的な、細かい穴やレースの部分。この作業は、現在は一般的にミシンで行われています。

まず刺繍を施したベースの生地から、レースにすべき部分を切り抜き、その穴の部分にミシンでレースを編んでいくのです。

マリアン氏の使用しているミシンは、もともとアナログの足踏みミシンだったもの。
これにモーターを取り付けて、今は電気で動かせるようになっていますが、
特別な機能もないシンプルなミシンです。
彼女は自らの手でベースの生地を細かく動かし、
自由自在にレース部分を作りだしていきます。

ミシンでレースを編んでいる様子の拡大写真

そばで見ていても、ミシンが自動的にレースを編んでいるか、
魔法のようにしか見えない手さばき。
長年の作業で、その手に刺繍を編む動きが全て叩き込まれているのです。

カロチャの刺繍の作り方、いかがでしたか?
作り方そのものは、とても単純。作り手の体一つ、シンプルなミシン、シンプルな材料。
けれども、その作業を何年も続けているからこそ、
体に染み込んでいる確かな技術があります。

このように、一枚の布と何色かの刺繍糸から生み出される、カロチャの女性たちの生活の中で受け継がれてきた、カロチャ刺繍。しかしその文化は、時代の中で少しずつ薄れ、地域の過疎化もあり、若い世代の女の子たちが昔のように刺繍をすることは少なくなりました。

この文化を無くすまいと、マリアン氏は日々、美しいカロチャ刺繍をつくりつづけています。

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